-- 神崎先生のミャンマーの熱帯林生態研究について
ミャンマーのチーク択伐天然林の生態と林業的持続性の研究で、2000年から始めて、2008年に最後に入りました。昨年からミャンマーは外国への門戸を開いたこともあるので、近いうちに再開したいとは思っています。現地ではフィールドワークを行い、伐採による影響や生態系の研究をしています。
-- ミャンマーチークの東南アジアにおける立ち位置は?
天然のチークというのはインド・ミャンマー・タイ・ラオスにしかありません。あとは全部、植林です。インドではもう早い時期に伐採できる天然林がなくなり、タイでも天然チークはほとんど切りつくしてしまいました。今のタイに天然チークはないことはないんですが、1989年に禁伐令が出て以来、伐採が禁止になったんです。そういう意味では、ミャンマーのチークは天然から出てくる唯一のチークです。
-- 天然チークはどのぐらい長く使えますか?
例えば日本の天然ヒノキの場合、樹齢1000 年のヒノキは1000 年以上もつと宮大工の方々は言います。生きた年数だけはもつ。やはり早く育った植林は腐りやすくて、それは木材すべてに当てはまることなんですね。……そんなことがあるんで、200年ぐらいの天然チークなら200年とは言いませんが。ひ孫の代まで、使ってくださいと(笑)
-- ミャンマー天然チークの伐採について
ミャンマーでは天然チーク林の択伐を行ってます。伐採の許されている幹直径60cm 以上の木を,20 ~ 30 年ほどのスパンを置いて林の中から順次抜き切りしていきます。これを択伐と言います。ただ新しいチークの若木が自然に更新する確率が低くて、長期的にチークが減少していくという問題があります。また、チークを伐採したあとに、竹が勢力を増してきて竹林化してしまうのも問題になっています。今の管理状況においては、チークのストックはだんだんと少なくなっています。
-- ミャンマーに植林チークはないんですか?
あります。一番古いものでは、イギリス統治時代の19世紀の中ごろの植林地が有名です。途中に断絶した時期もありますが、その後継続して植林されています。しかしその規模はかなり小さかったので、1980年代から植林面積を増やしてきました。そのころのチークも30年ものになるので、すでに植林地での伐採も始まっています。まだまだサイズが小さく、天然のチークには劣りますが。
-- 植林チークと天然チークの違いは?
そうですね……たとえば昔、日本はスギを台湾に植えたことがあるんですけど、あまりにも年輪幅が広くて、すかすかで使い物にならなかった。成長が早くてすぐ育つということは、実はクオリティは低いってことなんですよね。だから、今でも昔伐採した屋久島のスギ(屋久杉)の地下の切り株を掘り出して、装飾品などを作っています。植林した木より美しく、長く使えますから。
-- 天然チークはどのぐらい長く使えますか?
例えば日本の天然ヒノキの場合、樹齢1000 年のヒノキは1000 年以上もつと宮大工の方々は言います。生きた年数だけはもつ。やはり早く育った植林は腐りやすくて、それは木材すべてに当てはまることなんですね。……そんなことがあるんで、200年ぐらいの天然チークなら200年とは言いませんが。ひ孫の代まで、使ってくださいと(笑)
-- ミャンマー天然チークの伐採について
ミャンマーでは天然チーク林の択伐を行ってます。伐採の許されている幹直径60cm 以上の木を,20 ~ 30 年ほどのスパンを置いて林の中から順次抜き切りしていきます。これを択伐と言います。ただ新しいチークの若木が自然に更新する確率が低くて、長期的にチークが減少していくという問題があります。また、チークを伐採したあとに、竹が勢力を増してきて竹林化してしまうのも問題になっています。今の管理状況においては、チークのストックはだんだんと少なくなっています。
-- 将来的に天然チークが激減する可能性は?
天然チークの伐採は20 年から30 年の周期で行いますが、あと数回の伐採ならストックがありますが、その先切っていくためには100 年後を予測したような管理方法の改善が必要だと私は考えています。それがチークの保全管理の難しいところでしょうか。
-- チーク材の特徴は?
そもそもチークは昔、木造帆船の甲板材として使われていたんですね。水がかかっても腐りにくい。海水にも強い。シロアリや腐朽菌にも強い。それぐらい耐久性が高いので、総チーク作りの家は現地の人にとって総ヒノキ造り家と同じくらいの憧れの的です。デッキチェアなどとして野外に置くのも適しているでしょう。プールサイドとかに。
-- ちなみに、チーク家具は愛用されてますか?
実は、そんなに使ってないんですよ(笑) タイで購入して船便で送るという知り合いも居ましたが。そもそも今までは、日本でチークを扱っている店は少なかった気がするんですよ。ほとんどのチークはヨーロッパに行っちゃうので。あと最近では中国とか。禁伐令後のタイにも流れてますね。そんなわけで、日本にはチークがあまり普及してないため、買おうという機会がなかったですね。
-- 弊社としては、日本人のライフスタイルの西洋化に伴い、チーク家具が普及してくると思うのですが、そのことに関してどう思いますか?
今までは本当になかったので、日本でもこうしてヨーロッパスタイルのチーク家具が出てきているのがびっくりですね。貴重な天然資源なので、正当な価格で、ちょっと高くても消費者が買ってくれるマーケットができれば非常にうれしいですね。熱帯の森林資源の価値を理解をしてくれる消費者が増えることは、必ず熱帯林保全に貢献してくれますから。
チークとは何か?――京都大学への取材を行う最大の動機になった根本的な疑問。このたびの取材で判明した知られざる歴史、そして我が国での状況――複雑なチーク状勢を、我々なりに噛み砕いていきたい。
-- チークの歴史は古い
1000 年、いや、もっと以前まで遡るだろう。チークの起源は明確にはわかっていない。天然チークはバー山地を初めとしたミャンマーを中心として、インドからタイまで広がっていた。大規模な伐採は、インドがイギリス植民地になったときからだ。
-- 帆船の甲板として重宝したチーク材
イギリスのスコッチウイスキー「カティサーク」、これは実在した帆船に由来する。ラベルに描かれている帆船の甲板がチークで作られている。手触りわかる通り、チークは他の木材と違って蝋質がある。そのため船の甲板に使うと水を弾く。だから水にも強く、長く使える。甲板や、他にも電車の枕木など多岐に使われていた。
-- 日本でも意外なところに使われるチーク
今でもフローリング材として使われることがある。一般的なマンションで使うのは稀だが、オプションで選べる業者が増えてきている。建築物では、京都の萬福寺では、講堂の柱にチークが使われている。また、国会議事堂の内装材にもチークが使われている。
-- イギリスのチークビジネスの歴史
そんな強度が強く希少な天然チーク。インドに次いでミャンマーをも植民地にしたイギリスは、そのチークを使って長期的なビジネスを目論んだ。天然の過剰伐採による枯渇を防ぐために、イギリス主導で、19 世紀半ばにミャンマーの林業局が伐採を厳しく管理するようになった。だがその後、技術革新により、軍艦は鉄鋼製になり、かつてほどの帆船需要がなくなった。
21 世紀の今でもミャンマーに天然チークが豊富に残っている所以は、英国植民地時代に森林伐採を厳しく管理していたことが主要な要因だと言われる。
-- 将来的な原木輸出規制
戦後、ミャンマーは半ば鎖国したため国際市場から取り残された。 20 世紀に移ると伐採の中心はタイになった。だが1989 年にタイでも禁伐令が出て、切れるものがなくなった。その後、再び脚光を浴びたのがミャンマーの天然チークだ。質がよく安かったため、伐採が禁止された隣国タイへ輸出され、市場に流れ始めた。
ただ2013 年現在、ミャンマーも政治体制が変わり、丸太のまま流す原木輸出を止めようとしている。そもそもミャンマーはこれまで他に輸出するものがなかったため、半ば仕方なくチーク原木輸出で外貨を稼ぐ側面があった。しかし開国に沸くミャンマーは今、状況がガラッと変わった。世界中から投資の話が舞い込み、もはや原木輸出で外貨を稼ぐ必要がなくなった。恐らく、この2~3年でミャンマーの原木は外に出なくなるだろう――アジア・アフリカ地域研究研究科は推測する。
-- ミャンマー製の天然チーク家具が生まれる?
結局、ミャンマーチークをタイに売ってタイで作って国外に売る、というのはミャンマーにとってはすごく損だ。原木輸出を禁止することで、タイの業者が安く買い取ることが不可能になるので、タイの業者はミャンマーに移ることになる。するとミャンマーに雇用機会が生まれる。ミャンマー内で、そのまま原木を加工しチーク家具を作ろうという流れになるからだ。Made inMyanmar の家具が登場するのも、そんなに遠い未来の話ではないのかもしれない。
-- 日本のチーク家具のデタラメ
現在、日本の業者は、商品名を勝手につけることができる。つまり、木材の名前を自由に決めることができる。植物の名前だとダメなのだが、商品にするときは、チークではなくとも、例えば「ニューギニア・チーク」等、そういったネーミングを付けることができる。そのため、木材がチークではないのに紛らわしい名前を表記するインチキな業者が多く存在している。
いわば、こうしたガラパゴスな日本のチーク家具市場を少しでも改善したい――希少な天然資源・チークのよさを普及する必要がある。
天然チーク家具市場を広めることで寄与できることが、我々にはあるのかもしれない。